脳は不思議だ

 [訪問看護記(5/17)]

 今日も、いつものように看護士さんが訪問され、まずは健康チェック。それから、床ずれの状態を診てくれた。
 「ああ、きれいになってますね」とのこと。一応、母が毎日がんばって坐っていたことを伝えると、母の手をとって
 「お母さん、ちゃんと守ってくれたんですね。ありがとう」といった。
 母も、にこにこ。
 そのあと、先週話していた英会話の本を取り出して、母と英語の勉強を始めた。
 私は、ふたりっきりにしたが、10分ほどやって、ふたりで散歩に出た。
 散歩から帰り、母の様子を聞くと、
「お母さん、散歩の間もずっとさっきふたりで覚えた英文を、繰り返し繰り返し言ってくれてましたよ。」どうせ、簡単な文だろうと、テキストを見せてもらうと、
I just have a hair down.
(ちょうど散髪したところだ)
初級英会話ではない。そんな難しいのを、拒まず、母は看護士さんとやってたのか。
もちろん、理解力などは、あやしいものの、私でも、とっさに意味がわからなかったのに、よく「いやだ」と言わなかったなと思った。
母が、英語をやったのは、ちょうど50代後半ごろで、父がなくなってからだ。はじめは、私たちの古い中学の英語の本を使って、ひとりで暇つぶしにやっていた。
 「英語やっていると、ボケないからね」などといって。
 そのうち、NHK英会話の初級の本を買って、テレビと併用して勉強しだした。ノートに、簡単な単語を書いて、覚えていたのを思い出す。
 2年ほどやって、また精神病が悪化し、それきりとなった。
 すごいブランクがあったし、もう、そんなものに興味などなくなっていると確信していた私は、「脳というのは、すごい」とあらためて思った。
 これから、はたして、どういう展開があるか、ほんとに記録ものだ。