今日、午前中、母の付き添いで近くの診療所に行って、帰るとすぐ一本の電話が鳴った。
私の友人からだった。彼女は、「あなたがお母さんのことで、救急車を呼んだときの気持ち、自分が体験してみてよくわかったわ」と開口一番言った。
私は、すぐに彼女の身になにか大変なことが起きたのを悟った。
彼女の娘さんは、二十歳すぎだが、高校生の頃いじめにあい、対人恐怖症になり、今は、通院しながら、少しずつよくなっている。だが、父親は、相変わらず「怠け者」という目で見ていて、折り合いがわるかった。彼女も、夫と娘のことで、疲れきっていた。
先週、外から帰宅した娘に、父親は、また威圧的な言葉をかけたらしい。じっと、それに耐えていたが、ついにきれてしまい。彼女は、そのとき、疲れていて別の部屋で休んでいたのだが、台所からなにか娘がばたばたと走りこみ、父親の前で、包丁をもって、わめいたのだ。
それから、ばんばんと包丁をあちこちにたたいて、手首を切ろうとしたらしい。
彼女は、異変に気づいて、娘から包丁を取りあげ、すぐに、通っている病院に電話した。
ところが、病院の応対は、たいへん冷たく、先生が休んでいるから、診察できない。どこかに、入院させたいというと、それも、紹介書は今すぐはむりと要領を得ない。
そうこうしているうちに、娘は突然大声でわめいて、道に飛び出し、地面に張っていた。その様子をみて、すぐに彼女は救急車を呼んだ。
救急車が来ると、娘は失神して倒れていたらしい。タンカーに乗せたまでは、いいが、救急隊員もどうしていいかわからない。
これは、私にはすぐにわかった。以前にも話したが、精神病院の入院は難しい。大きな病院に通院していても、ベッドがあかないと拒否される、ましてや、はじめてだと受け入れてくれないのだ。
彼女の娘は、クリニックに通っていた。だから、こういう場合でも、大きな病院に搬入はできない。
結局、クリニックに行って、安定剤の注射をするという応急手当だけだった。
それでも、彼女には、私の経験がいくらか役にたったらしく。それだけが少し救いだった。
彼女自身、もうくたくたで、しかも、肝心のクリニックの対応などで気力をなくしていた。これから、大きな病院に予約して、診察を受ける予定ではあるが、それまで、娘と自分がもつかどうかという様子だった。
彼女の話を聞いて、私も何度こんな思いをしたんだろうと思った。母が錯乱状態なのに、病院へ電話して、受け入れの承諾を得てからしか連れていけない。ほんとは、救急車を呼んで連れて行ってもらいたいのに。しかも、この前は、一軒目で断られ、途方にくれた。保健所の方が、「以前通っていたところに電話したほうがいいですよ」とアドバイスしてくれなかったら、母はあのまま入院もできなかった。
私は、いままで母の事件のことは、つらい思い出なので書いたことはない。しかし、母の事件から得た私の経験が誰かの助けになるのならと思って、少し大まかに書くことにした。(これから、数回にわけて書くつもりだ)
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