[発病]
母が発病したのは、妹を産んだ年である。年齢は、32歳だった。
亡父から聞いた話によると、はじめは、「うつ病」であり、ひとりで留守番していると、不安に襲われたらしい。私は、まだ4歳で、専業主婦だった母は、妹を妊娠してから、さらに病状が悪化した。
母は、五人兄弟の三番目で、大家族の家に育った。私が生まれたときは、実家にいて、父も実家近くで仕事をしていたので、家族の助けがあった。しかし、その後、実家から離れたところに移り住み、環境の変化についていけなかったらしい。
それでも、父もいろいろと気をつかい、近所の人に「留守の間、なにかありましたら、よろしく」と頼んだりして、母が困ったら、声をかけやすいように計らったりした。それでも、病気が進むと、夕方、父がもどるまで、家事もほとんどできずに、じっとしていたらしい。私は、当時、もう、幼稚園に通っていたし、そばにお寺があり、そこの住職さんが、「遊んでいっていいよ」と言ってくれたので、父が帰るまで、お世話になっていたという。
母が妹を妊娠中、非常に不安定だったので、父も、母の実家の祖父に相談していたらしいが、出産は、地元でした。それから、すぐに、祖父が母を迎えに来て、実家の近くの精神病院に入院した。
そのため、母は、妹を出産した記憶がないという。妹も、生まれてから、一年ぐらいは、母と離れて育った。子育ての経験のあるお手伝いさんが来て、妹の面倒をみていた。
母と妹の親子関係は、私と母とは、まったく違ってしまったのも、このためである。
大きくなっても、妹は、頭では、母とはわかっていても、なにか姉とは違っているなとずっと、感じていたという。
また、母も、私と妹とは、分け隔てなく育てていたものの、心のどころかに、違和感を覚えていたらしい。「生んだ記憶」というのは、母親にとっては、とても、重要なものなのだ。
母は、一年後、退院し、その後の2、3年は、親子が離れて暮らすことはなかった。私が、6歳のとき、父は、また、転勤で、母の実家の近くにもどった。
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