母の病歴(9)

[ケースワーカーがつく]

  今度のH病院では、医師、看護婦、ケースワーカーがいた。患者ひとりひとりに、担当のケースワーカーが一人ついた。
  ここでは、医師と患者の間にたって、さまざまな相談や手続きなどの代行などをしてくれる。入院中は、患者との面接のあと、ケースワーカーとも面接し、医師からの治療についての経過などの報告をしてくれ、また、患者の病棟生活の様子も知らせてくれた。家族からのいろいろな要望も聞いて、それを医師や看護婦と打ち合わせながら、やっていくという形だった。

  いままで、I病院では、入院中は、特に医師と面会する機会も少なく、退院間際に会う程度。退院後は、まったく患者まかせで、通院している間はいいが、いかなくなると、まったくつながりがなくなった。家族も、母の病気が悪化した場合、誰に相談すればいいのかわからなかった。

  H病院では、退院後も、母が毎月通院し、診察をうけ、薬を飲むという点では同じだったが、それらについて、ケースワーカーが継続して、把握していた。
  そのため、薬を飲まなくなったり、通院をいやがる場合は、まず、ケースワーカーに相談できるようになった。
  ケースワーカーが場合によっては、患者のお宅に訪問して、様子を見たりして、入院の必要ありということになれば、ベッドを確保してくれたり、細かなことをすべてしてくれた。

  そういうこともあり、母は、H病院に一年入院後は、少なくとも、3年間ぐらいは、通院しながら、普通の生活を続けることが出来た。
  また、このころから、精神科の分野での新薬の開発が進み、良い薬が出始めた。薬の名前は、忘れたが、母は「注射一本で、一ヶ月効果がある」薬と飲み薬を併用していた。
  ケースワーカー制度は、とてもいい制度だ。ただ、ケースワーカーは、数が少ないため、非常に多忙で、なかなか電話もつながらないし、ゆっくりと相談もできないことがあった。
  また、家族がなんでも、ケースワーカーに頼り、医師との距離がひろがり、治療の内容や薬のこと、患者への対応、病気についての知識などを自発的に知ろうとしなくなったのは、のちのち大変な苦労を背負うことになるということは、この頃の私たちには、想像もつかないことだった。
 
 

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