自分の世界にいる母


 母が、精神病を発病したのは、私がまだ幼稚園児のころだったという。ある日、母は車に乗って行って、帰ってこなかった。それで、留守の間、母方の祖父が私をなだめるのがたいへんだったという。
 それから、しばらくして、母は帰ってきて、ふつうの生活が続いた。しかし、妹を生んでから、また入院した。そのころ、私は、母が病気で病院にいることは、理解できたらしい。ときどき、父と見舞いにいくのが、楽しみだった。
 小学校に入っても、2年か3年周期で、入院することがあった。もちろん、通院は、続けていたが、再発することが多かった。
 しかし、私も妹もだんだん慣れて、ごくふつうのことのように受け止めていた。
 母が、暴れたり、警察のお世話になったのは、高校にはいってからで、父がかわいそうだったし、母は、自分の世界に入っていて、「どうして」と聞いても、答えてくれなかったのが、悲しかった。
 正直、やはり、そのころは、思春期なので、私なりに、悩んだ。
 大人になっても、私に、いつも、母を理解したいという気持ちと、なぜ、家族に心を打ち明けてくれないのかという気持ちと、言葉ではいえない複雑な気持ちを持ち続けている。
 同居したのは、母が10年前に、また、警察のお世話になってからだ。しかも、自分の貴金属類や貯金をすべておろして、近所やあちこち歩いて、捨てたのだ。
 本人も、「自分がこわいから、管理して」と言ったので、同居した。それから、二回入院し、現在にいたっている。
 
 

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