春になり、以前よりも体が動くし、元気になった分、母の幻聴は以前よりも頻繁に起こるらしい。部屋にいると、ひとりごとを言っていることが多い。声も大きくなった。
こんなときは、本人は自覚がないもので、家族が「声が大きくなっているよ」と注意する。そうすると、声を小さくしたり、ひとりごとをやめる努力をする。このように、まわりから言われたら、自己コントロールできる場合は、心配ない。今は、薬の加減もちょうどいいということを示している。
今日は、午後精神科の看護師さんが来た。事前に母の最近の様子は、メールで知らせてあった。母は、にこにこしている。挨拶のあと、
「最近、うるさい声がよく聞こえますか」と看護士さんが母に聞いた。母は、ちょっと意外な様子だったし、私はよほど信頼していないと言わないなと思った。
「はい、聞こえます」
「どんな声ですか?男の人の声ですか?女の人の声ですか?」
「両方あります」
「いやなことをいいますか?ひどいことをいいますか?」
「そうでもないです」
「つらくありませんか?そんなときは、どうなされてますか。」
「なるべくね。答えないようにしたり、無視するようにしたりしてます」
このやりとりを見ていて、信じられなかった。少なくとも、私の知る限り、過去に病院関係者にこんなにすらすらと、自分の心の内を語ったことなどなかったからだ。
私が、いちばん気を使ってきたのは、母のまわりには、敵はいないよということをわかってもらうことだった。だから、いつもいつも「先生も、看護士さんも、みんな味方なのよ」をなにかにつけ、いい続けてきたのだ。
やはり、母は、すこし変わってきたのだと実感した。
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