ディサービス記(3/27)

 この頃、ディサービスが気に入って、待ち遠しくなった母は、朝から優等生だった。
 一人で起床して、朝食をとり、薬をのんでから、部屋で着替えをし、髪まで整えて、迎えの車がくる時刻が近づくと、支度して、リビングに出てきて待った。
 これらの行動が全部きちんとやれるというのは、いかにディサービスに関心が強いかを示している。普段は、こんなにすんなりいかない。髪もぼさぼさなのに。
 迎えの車が、家の前に来たので、私は、母に言って、先に外に出た。ところが、いつもの運転手さんではなかったからか、その車は、Uターンして、走り去ってしまった。「えーっ、どうして?」
 母は、玄関先で不安そうにしている。すぐに、ディサービスへ電話して、しばらくして、その車が戻ってきた。
 「すみません。はじめてなので、路地をひとつ間違えたと勘違いして」とのこと。
 私も母も、ほっとした。母は、いつものように車に乗り込んだ。
 夕方、母が帰宅すると、その日の出来事を聞く。すると、今日は、近くの野川の桜をみんなで見にいったとのことだ。
 「もう、何年も見てなかったから、よかったね」というと、母もとてもうれしそうだった。桜をみようという気持ちももてなかった過去がうそのような母の笑顔だった。
 
 

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