母は、背が少し曲がっていて、歩くときに、前のめりになり、少し左右によろよろしている。それでも、なんとか杖を使わずに、歩いている。今は、自宅から横断歩道をわたり、歩道にそって、200メートル歩いてコンビにまでいくのが、やっとである。それ以上は、「できない」と拒否する。
私は、現在の状態から、付き添いながら、だんだんとすこし距離を延ばすようになればと思っていた。それで、ヘルパーさんには、「なるべく、手をひいたりしないで、見守りながら付き添ってください」とお願いした。
ところが、はじめてしばらくして、母が「私は、手をひいてもらわないと歩けないから」と、いままで一人でなんとか歩いていた道も歩くのを拒否するようになった。すぐに、ヘルパーさんには、事情を話し、「本人は、手を引いてもらい、逆に自信をなくしている」と伝えた。
ヘルパーさんは、しばらくは私の言うように、手をひかずに付き添っていた。ところが、数週間して、また、母の様子がおかしい。ときどき、「いつも、手をひいてもらうから歩けるの」という。
母に、歩いているときの様子をくわしく聞くと、最近は玄関から出て戻ってくる間、ずっと手をひいてもらい、物をもってもらっていたという。それで、ヘルパーさんのいない日は、外をひとりで歩こうとしなくなったのだ。
私は、「このような、介助の仕方では、以前よりも後退することになりますので、賛成できません。」とヘルパーさんと話しあった。よく話を聞くと、「歩くと転ぶのでは」と常に恐れていたのは、ヘルパーさんのほうであることがわかった。
「自分の責任になるし、事務所の名前にも傷がつく」というのだ。母は、そうでなくても、自信がなく、それでも、がんばっているのに、いっしょに付き添う人が励ますのではなく、自分の保身を気にしているのでは、うまくいかないと思った。
その後、ケアマネからも、ヘルパーさんのほうに話をしてもらい、すこしずつ意識を変えてもらうことができた。ただ、母のほうは、まだ、歩くことへは、自信はついていないようである。母の意識を変えるのは、難題である。
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