土曜日の朝、母はいつものように起床後、歯磨きをしていた。
私は、当然そのあと、いつものように朝食をとるものと思っていた。しばらくして、母は食堂に入ってきて、パン皿が並べてあるのを、じっと見てから、急に自分の部屋に戻っていった。
「食べないの?」と聞くと、私のほうを振り返り、思いつめたような表情で「ぬくことにした」といった。
しかたないので、薬だけは飲ませて、本人の好きなようにさせた。
少し時間をおいて、「どうしたの?食欲がないの?」と聞いてみた。
「体に悪いから、食事をぬくことにした」という返事。なんとなく、幻聴かなと思ったが今は、そっとしておこう。「朝は、ぬいたから、お昼は食べてね」と言い残して。
夕方、母の顔色もよくなり、話を聞いてみたら、やはり、朝は、幻聴が聞こえて、「このところ、食べ過ぎて体に悪いので、食事をぬくように」と言われたとのこと。母は、昼はしっかり食べたし、そのあともきちんと食べている。そして、「あんなふうに、たくさん食べるのは、もうやめる」ときっぱり言った。
正直いって、あの暴飲暴食を毎日つづけられたら、私も、同じことを母に言うなぁと思った。
主治医が言うように、幻聴そのものが悪いのではなくて、その内容なのだという言葉を思い出していた。こちらも、そういう見方でなんでもかんでも幻聴はよくないとぴりぴりしないで、内容によって、本人にどう対応するか決めたほうがいいと思った。
ハブランサス(レインリリー)